ジャンクな豚ミンチのブログ。

自称買い物依存症患者による自作PCなど、ガジェット系を主体にしたブログ。

電子工作: ハムバッカーのマグネット換装。

こんばんは、不要不急じゃないのにピックアップを買いたくなってしまう豚ミンチ(id:Pork_Mince) です。
今回はこのピックアップという、厄介なギャンブル性アイテムに関して、少しでも浪費額を減らせる可能性のあるネタを紹介します。
ズバリ、マグネット換装です。

目次

  1. はじめに
  2. 下地: Seymour Duncan TB-16
  3. 交換用マグネットの種類
    1. アルニコマグネット
    2. セラミックマグネット
  4. マグネットの交換手順
  5. TB-16改 レビュー
    1. アルニコ5(出荷時)
    2. アルニコ2(モントルー製)
    3. アルニコ4(All Parts製)
    4. セラミック(TB-5)
    5. 厚型セラミック(TB-6)
  6. おわりに

はじめに

ギターのピックアップは交換する事により、音質を大きく変化させる可能性を秘めたパーツです。
勿論、乗せる竿によっても変わり、交換前より良くなる事も、悪くなる事もある…。
店頭で手持ちの竿に乗せて試奏する事もできず、取り付け後の返品も出来ない(中古市場に流す事は可能)。
そして価格も、大手3社の主要モデルで10,000円前後、恐ろしくギャンブル性が高いのです。

それ故に、買い物依存症の購入対象として大人気のピックアップ。
そして、みんな大好きハムバッカーは、マグネットを交換する事で「ピックアップ交換に匹敵する変化」を実感する事ができます。
まぁ、改造扱いなので自己責任、それなりのリスクはありますが、マグネットによっては賭け金の少ないギャンブルとして楽しむ事ができます。

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改造病の入り口、ハムバッカーのマグネット換装。

今回はピックアップに大金を払いたくない堅実派のDTM趣味層の為に、マグネットの交換手順を紹介します。
生贄…じゃなくて下地は、筆者手持ちのSeymour Duncan TB-16です。


下地: Seymour Duncan TB-16

今回、マグネット交換の下地として使用するのが、Seymour Duncan社のTB-16(59/Custom Hybrid)です。
TBという型番はFender/Floyd Roseスペースなので、Gibson等のTOMブリッジの場合はSH〜から始まる型番に読み替えて下さい。

さて、このTB-16ですが、公式によると、

  • アジャスト側コイル: TB-59(‘59Model)
  • ノンアジャスト側コイル: TB-5(Custom)
  • マグネット: アルニコ5
  • 直流抵抗値: 11.7k
  • レゾナントピーク: 5.95kHz
  • ケーブル: 4芯

というスペックを持つハムバッカーのようです。
まぁ、同社のフォーラムの記事が元になって商品化されたそうですが、異なるコイルを組み合わせる(DiMarzio社の)デュアルレゾナンスコイルみたいな格好ですね…。
59やCustomなどに比べて高価な理由も、先述の特許料が上乗せされている…という噂もあったくらいなので。

また、特筆すべきは11.7kという直流抵抗値。
Seymour Duncan社のハムバッカーと言えば、ヴィンテージ志向orハイパワー系の両極端なイメージが強かったので、この出力のモデルの登場は大きいと思います。
おそらく、このミドルパワー系のハムバッカーは(ジェイソンベッカーモデル等)アーティストモデルを除いて本機のみではないでしょうか。

TB-16の音質については、後述のアルニコ5マグネットの部分で解説しますが、この出力バランスが最大の魅力である事は疑う余地もありません。

  • フルサイズハムバッカーとしては、低すぎず高すぎない絶妙な出力。
  • 同社のフロント用主力(SH-1n、SH-2n、SH-18、SH-PG1n、APH-1n、Saturday Night Special)とバランスが取りやすい。
  • SSH構成でコイルタップする場合、ノンアジャスト側コイルを使うとバランスが取りやすい。

まさに1本のギターで多目的な用途をカバーでき、近年のDTM竿のリアピックアップとして好適な逸品と言えるのです。


交換用マグネットの種類

マグネット(磁石)の材質はいくつかありますが、ピックアップに使用されるのはアルニコとセラミックの2種類です。
厳密にはさらに細分化されていますが、ここでは一般的なモノをざっくりと紹介します。

アルニコマグネット

鉄にアルミ、ニッケル、コバルトを加えた合金で、組成の割合により種類が分かれます。
経年劣化で磁力が落ちるとされる一方、通常使用で気にするレベルでは無いと言う意見もあります(10年20年でアルニコ5がアルニコ2並みの磁力に落ちる事はない)。
ギターで使用されるモノを出力順に並べると、アルニコ3 < アルニコ2 < アルニコ4 < アルニコ5 < アルニコ8、らしいです。
市場からAll Parts Japan製のマグネットが姿を消した今、国内での単品購入の選択肢が限られてしまいました。

アルニコ2、3、4

アルニコ2は5に比べて磁力が弱い、3はコバルトを含まない、4は鉄の含有量が多い…程度に聞いていたので、詳しい組成の違いについては不明です。
現時点でこの3種は、単品販売はモントルー製のラフキャスト(表面を研磨していない)仕様のモノばかりです。
Seymour Duncan社が自社製品に採用しているアルニコ2と4は違うと思うので、モントルー製以外が欲しい場合は、ピックアップ本体を買って取り出す他ありません。

アルニコ5

ピックアップ用として特に使用頻度が高いのがアルニコ5で、単純に「アルニコ」と言うとアルニコ5を指す場合がほとんどです。
元々磁力の強いマグネットですが、ヴィンテージ志向で高温減磁処理した製品もあります。
交換用のマグネットも数多く出回っており、入手に困らないですが、極端に安価なモノは品質が不安なので筆者は買っていません。

アルニコ8

アルニコ5よりもコバルトの比率が高く、コストの高いマグネットです。
ピックアップでの使用例も少なく、国内での単品販売も絶望的。
どうしても欲しい人は、eBay等で個人輸入に頼るか、TB-15やサトリアーニ和尚モデルを腑分けして取り出しているそうです。
また、合わせるコイルによっては宝物にも地雷にもなり得る、非常にデリケートなマグネットらしいです(特にTB-15/SH-15は酷評も多い)。

セラミックマグネット

セラミックマグネットは工業製品的に言うとフェライトマグネット、酸化鉄を主原料とした陶器のような材質…と言われます。
コストの点でアルニコより安価であり、経年劣化による減磁はほぼ無いとの事。
ハムバッカーでは、ハイゲイン志向の高出力ピックアップや、中華製量産型の爆安品に使われる事が多く、ガサツとかチープとか負のイメージも根強い気がします。

安価な印象のセラミックマグネットですが、意外にも国内市場ではハムバッカーの交換用マグネットの単品販売が無い。
また、Seymour Duncan社のTB-6やNazgulに採用されている厚型のモノは他に無く、入手方法が該当ピックアップの腑分けに限定されるとの事。
TB-5のような薄型は、中華製の安物を腑分けして入手すれば個人輸入より安いですが、Seymour DuncanやDiMarzioなどの大手が使うモノと同じ品質とは考えにくいです。


マグネットの交換手順

それでは、マグネットの交換方法を紹介します。
最初に注意喚起しますが、断線のリスクも少なからずあり、改造後は中古品として買取を拒否される可能性もあります。
本記事を参考に作業を進め、失敗しても筆者は責任を取りません。
完全自己責任にてお願いします。

まず、以下のモノを用意して下さい。

  • 下地ピックアップ
  • 交換用マグネット
  • アセートテープ(12mm幅くらい)
  • 各種ドライバー

用意が済んだら、ベースプレートの裏にボビンを固定している4つのネジがあるので、全部外します。
表のボビンにあるアジャスト側コイルのポールピースも、マイナスドライバーで緩めておきます。
両側アジャストの製品では両側とも、ヘクサポールピースの場合は6角レンチを別途用意します。

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ネジを緩める。

次に周囲の布テープを剥がし、ボビン下のマグネットを確認します。
この際、マグネットの端に目印を付けておきます。
今回の例ではノンアジャスト側に黒で印が付いていたので、そのまま利用します。
※追記: 目印が付いているのは「ノンアジャスト側」です、写真の表記が間違っています。

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目印が無ければ付けておく。

ここからが難しい、マグネットの取り出し作業になります。
まず、コイルのタップ線などが束ねてある側にテープがあるのでそれを剥がし、断線に注意しながら精密ドライバーでマグネットを押し出します。
ある程度出てきたら、手作業で丁寧に引き出していきましょう。
次に、取り出したマグネットと交換用マグネットを並べてくっつけ、同じ箇所に印を付けます。

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マグネットを取り出し、方向を合わせる。

この印を目安に、交換用マグネットを元の位置に戻します。
最初は手で差し込み、最終的には精密ドライバーで位置を微調整します。

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作業終了、後は表面を拭いて取り付けるだけ。

最後にアジャスト側ポールピースを締め、バックプレートのネジを戻し、アセートテープを巻き直して完成です。
たぶん、ロウが出てくるので、ボビンの表面をクリーニングしましょう。


TB-16改 レビュー

今回換装したのはモントルー製アルニコ2ですが、オリジナルのアルニコ5や、以前に手放したTB-16改も含めてレビューします。
勿論、筆者個人の趣味趣向もあるし、乗せる竿によっても変わってくるのであまり参考にはならないかもしれませんが。
何となく変化の方向性は掴めると思います。
ちなみに、今回アルニコ2、アルニコ5、セラミックで使用した竿はESP製のジャンクMV再生品で、

  • ボディ: ハードアッシュ(ホワイトアッシュ)
  • ネック: メイプル3P/エボニー(ボルトオン)
  • ブリッジ: Floyd Rose

という、重低音が良く出て、かなり硬い音質のギターになります。
当然、ピックアップも相性が出やすい。

また、厚型セラミックの方は、廃棄済みのジャンクJa糞nに乗せていた時の記憶を辿ってのレビューとなります。
酷評していますが、乗せる竿がゴミ過ぎたので、まともなギターに乗せると化ける可能性があります。

アルニコ5(出荷時)

最初、Customのコイル+アルニコ5=Custome5(SH-14/TB-14)だし、製品名は59/Custom5 Hybridが適切かなとツッコミたくなりましたが…。
9割方Custom5のキャラクターで、そこに59のバイト感と刺さる高域が加わる感じ。
直流抵抗値の値相応に出力は落ちますが、やはり…と言うか、Customの特徴は微塵も無いです。

流石にCustom5程ではないですが、鉛のハンマーでブン殴るような重く硬い低域なので、人によっては過剰と感じるかもしれません。
高出力のアルニコ5マグネット搭載ハムバッカーにありがちな塊感もあり、リード事のコントロール製も良いと思います。
そして59の特徴なのか、Custom5よりも尖った高域も持ち合わせています。

今回乗せたジャンクMVは相性が悪く、重低音が飽和し、ハイがめちゃくちゃ痛い感じになり大失敗。
ラフキャストやUn Oriented仕様のタイプだと、硬さや音圧の緩和が期待できるので、機会があれば試したいところです。
たぶん、出荷時のアルニコ5版は、マホガニーやバスウッドのボディや、ローズウッド指板のギターと相性が良いのでは?と思います。

アルニコ2(モントルー製)

モントルー製のラフキャストなので多少違いはありますが、Customのコイル+アルニコ2なので、Custom Customの特徴が色濃く出ています(パワーは落ちますが)。
低域が少なくスッキリしており、サスティーンも長く倍音成分も多い。
高域も痛くなく、スムーズに良く出ますが、Custom Custom程太くはないです(その分繊細)。

全体的にウォームで軽快な印象であり、POPS〜Jロックあたりが丁度良いかな、と。
HR/HM系の刻みに対応するには低域が物足りない+パワー不足な感じがしないでもないですが、硬く重い材構成のギターとの相性は良く、バランスも取れて好印象でした。
近代兵器の補正機能は優秀なので、セッティング次第でメタルをやれない事もないと思いますが…。

アルニコ4(All Parts製)

個人的には残念なマグネットでした。
アルニコ4はフラットと言われ、出力も2と5の中間みたいな位置付けらしいのですが…。
何というか、バイト感と言うより暴れっぷりが凄いですね(大失敗)。
低域の籠りは、スプリングの交換である程度改善したのですが。
この音が好き、という人は稀だと思います。
アルニコ4に関しては、Customのコイルと極めて相性が悪いそうだし(試した知人談)、TB-16みたいに片側だけでもダメって事ですな…。
モントルー製ラフキャストにしたり、竿を変えると印象も変わるかもしれないけど、もう試す気力は無いかな。

セラミック(TB-5)

TB-5のセラミックマグネットそのものを移植したので、実質Customとセラミック版59のハイブリッドになります。
交換用セラミックマグネットの流通が無いので、TB-5とTB-16を両方買ってマグネットの入れ替えをすると、かなりアホみたいな出費になりますね…。
マグネット価格=TB-5の価格なので、安物扱いされているセラミック(フェライト)マグネットにこの額は出したく無い、というのが本音でしょう。

さて、音質の方ですが、ほぼCustomです。
シャープな高域やサスティン、平滑化された中域、(半音〜1音下げ程度の)ダウンチューニング適正とかね。
片側が59のコイルなのでレンジが狭まり、火力も落ちるので、Customよりも高域が痛いかもしれない…。
一応スムーズで加工性も良い音だし、DAW全盛の製作環境にも合っていると思います。
ただ、オマケしてくれる感が無いので雑なプレイは雑に聞こえてしまう。
Custom同様、アルニコ系のピックアップに比べてリードが弾きにくく感じます。
乗せる竿(木材/構造)によって相性も出やすいかも。
ある意味、センシティブで上級者向けかもしれません。

厚型セラミック(TB-6)

Seymour DuncanのTB-6やNazgulに採用されている厚型のセラミックマグネットです。
これも乗せた竿がゴミだったので仕方ないですが、サスティーンが減少して弾きにくく、音も荒っぽくて残念な印象に…。
たぶん、このキャラクターは使い所が難しいかと思いますね。


おわりに

買い物依存症の1つでもあるピックアップジプシーを患っていた筆者ですが、マグネット換装に手を出し始めて以降、浪費額は減った気がします。
ただ、近年はアルニコ5以外の交換用マグネットは入手が難しくなり、好奇心と物欲が暴走すると、マグネット1つの為にピックアップごと買いかねない危険性もあります。
そして、マグネット換装に端を発する改造病も、病状が進行した次のステージはボビンをバラしてハイブリッドコイルです。
沼にハマるとヤバそうです。

そして、改めて思ったのが…、Seymour DuncanやDiMarzio以上のグレードのピックアップなら、安易なマグネット換装はオススメしない、と言う事。
大抵は出荷時の状態がベストなのですよ…。
それで、結局元に戻してしまう。
もっとも、ピックアップメーカーの商品化に至る過程は、我々素人が想像する以上の試行錯誤があると思う。
彼らもコンセプトに基づいて最善を目指した結果なので、今後はオリジナルを尊重したいと思っています。